ただ、

散っていく。
沈んでいく。
全てを包む静寂の中。

そうしていつの間にか、何もかも消え失せる。


ただ一人、いや、ただ一つ?
残っているのは彼だけだった。

何もない、ただ真っ白い世界。
どこを見てもただの白。

彼は足を動かしてみた。
歩く。
前に進む。
止まる理由も見つからず、ただ、際限なく。

ここはどこで、どうして自分はここにいるのか?

ひたすら白い世界を歩きながら、彼は誰ともなしに尋ねる。
応えるものはいない。

それきり考えることすら放棄して、彼はただ歩き続けた。

しかしやがて、彼は気付く。

ここはどこでもない。

世界が滅びたのではなく、
彼がただ一人生き残ったのではなく、

ただ、
自分一人が死んだだけなのだと。

(2012/5/28 再アップ)

2008/8/3

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